
もともと、日本における第1世代レクサス(2005年〜2010年頃)では一部車種にて「 version.S」「version.F」グレードを設け、大口径タイヤと少し硬めの足回り、スポーティな内装を中心としてラインナップしていましたが、第2世代レクサスでは「F SPORT」としてフロントグリルの造形を大幅に変更したり、専用のサスペンションを備えるなど、価格差も大きくなりましたが、通常モデルとは大幅な差別化を行い、ユーザーには好評を得ています。
特にSNSで情報を収集するようなオーナー層における「F SPORT」占有率はかなり高いと思われ、特に新型「IS」においては大部分が「F SPORT」を選択されているようです。

第2世代レクサスでは、世界限定約500台、未だに車両価格以上のプレミアが付いており、名車と名高い「LFA」を頂点として、サーキット走行をそのまま行える「ISF」「RCF」そして「GSF」というハイパフォーマンス車である「Fモデル」をラインナップ。

そして、パワートレーンなど動力性能はベースモデルと同様、専用内外装アイテムでFのエッセンスを味わう「F SPORT」を幅広くラインナップするというのは、まさにメルセデス・ベンツ、アウディ、BMWいわゆる「ジャーマン3」の後追いと言えます。
特に刺激の強いんスピンドルグリルの採用も相まって、レクサスは「地味」「おじさん臭い」といったイメージから脱却したのは実感できるところです。

さて、今回、とあるWeb記事を見て感じさせるものがありました。
■ENGINEER Web 新しいレクサスの始まりを予感させる新型LS
https://www.afpbb.com/articles/engine/3329834
モータージャーナリストの島下泰久氏とENGINE編集長の村上 政のインプレッションなのですが、最近よくある「LS原点回復記事」とはちょっと趣が異なります。LSに「F SPORT」は必要なのかというところに言及しているのは、なるほど、と感じてしまいました。

第3世代レクサス車である「LC」発売後、ほどなくしてレクサスは単にクルマの性能面を追求するのではなく、ライフスタイルを中心に据えたブランド展開を実施しており、全体的にスポーティな味付けではあるもののの、「F」や「F SPORT」を全面に押し出す比率は減っているように感じます。
また、最近の新型車の開発陣のコメントからも、かつてのような「ジャーマン3」の後追いという感じはしなくなってきました。(レクサスはハイパフォーマンス競争から一線引いたとも言えますね)
初代開発主査の矢口氏が作立ち上げた「F 」ブランドというのは今となっては希少性が増してきた、大排気量自然吸気エンジンを中心とした時代のブランドですが、電動化時代に突入している現代において、「RCF」しか存在しない「Fモデル」のエッセンスを受け継ぐ「F SPORT」の果たす役割とは果たして。

さて、記事にもありましたが、世界的なセダン需要の減少もあり、フラッグシップセダンとしての存在意義が問われるレクサス「LS」に果たして「F SPORT」は必要なのか。
最近のレクサスは、開発リソースの問題もあるのかもしれませんが、発売後1年経過後の年次改良で足回りやハンドリングを中心にセッティングを見直す傾向が目立ち、当然改善されることは望ましいことなのですが、通常モデルとF SPORTではセッティングも全然異なるでしょうし、「F SPORT」の存在があるがゆえに、ベースモデルの熟成がしっかり行われていないと感じるのでは、と思うことがあります。

確かに私もスポーティなモデルは好きですが、今のレクサスにおいて「F SPORT」が必須グレードであるかというのは疑問に感じるときがあります。
そもそも、現在レクサスの主力モデルである。「RX」や「NX」、「UX」、「LX」のSUV系モデルは、レクサスの7割超を占めます。しかし、「SUVモデル」にはそもそも「Fモデル」が一度もラインナップされていません。
ジャーマン3勢は、SUVモデルにも隙間なく、スポーツモデル(AMG、RS/S、Mモデル)を投入していますが、レクサスにはそれはありません。

確かに、第2世代レクサスでは「F SPORT」の果たした役割が高かったと思いますし、当方もそれを望むいちユーザーでした。
しかし、当時とは方向性が異なる今のレクサスの各モデルに幅広く「F SPORT」を展開する必要があるのかどうか。スポーティな内外装がユーザーの好みであれば、F SPORTモデルをベースモデルにするという方向性もあるはず。
レクサス初の電気自動車(BEV)である「UX300e」には「F SPORT」の設定はありません。今後発売されるBEVの「RZ450e」ではどうでしょうか。
ベースとなるべき「F」の各モデルが次々と1世代で販売が終了してしまい、今後の「F」の展開が未だ見えない中、SUVモデルが販売の主体になっている現状、「F SPORT」が存在する意義は果たして?非常に考えさせられる記事でした。
この記事へのコメント
うめてん
Fsports人気も本革やシートベンチレーション等ベースに欲しくてもつけられないものがあったり、情報量が多少多い可変メーターがFsports選びを後押しいていると思います。
なまっくすさんが記載してるように熟成が遅くなる事も考えらえるので、Fsportsの設定はF直系のISとRCに絞りほかの車種には正直なくてもいいのではと思います。(見た目だけのスポーツルックの設定はあってもいいと思いますが)
キノ
モータージャーナリストの五味氏が新型LS試乗動画で話していたように、LSは個々のデザインや装備を見ればドイツ3と比較しても遜色無いものがあるにも関わらず、まだ厳しい評価が聞こえてくるのは、LSとしての世界観がぶれてしまっているからと思います。
その点、LCは世界中の高価格帯のクーペと比較した時に、劣る要素があっても気にならないのは、世界観が確立されているからだと思います。
LSらしさをどんどん突き進めて、苦手な要素は無理して伸ばして優等生にならない方がいいのかなとデビュー当時から思う所です。
レクサスへの期待の大きさ故、長文となり失礼致しました。
なまっくす
F SPORT専用の装備は魅力的ですよね!
確かに一方で標準グレードを選択される方が(SNSでは)かなりの少数派になっている部分もありますので、F SPORTの装備内容を変更して価格を引き下げるという方法もありそうですね。
「F」を受け継ぐベース車両がないのに「F SPORT」というネーミングはそのうち違和感をおぼえる方がでてくるのではないかと危惧しています。
なまっくす
新型LSは過去のレクサス車に無いぐらいに様々な意見がでた車種と思いますが、フルモデルチェンジをして方向性を変化する難しさをあらためて感じる結果となりましたね。まだまだフラッグシップセダンの壁は厚く、レクサスが得意とする分野をしっかり極めた上で特徴を出していくことが必要であるのですね。社用車でもミニバンやSUV系が採用されることが増えましたので、今後のLSとしてのあり方も議論されていることと思いますが、今回のマイナーチェンジを見る限り、フルモデルチェンジは早期に行われそうですから、次こそはさすがLSと評されることを期待したいですね。
レクサス検討中
こんにちは
今回の記事は私もうっすら感じていた内容であり、そう感じている人が潜在的存在から顕在化してきているのかなぁ┅と。
ハイパワー4駆が存在しない=基本、内外装の差別化のみで価格差が発生するとなると夢の無い話しですが、Fスポよりコスパの優れているI パケなのかな┅?と。(パフォーマンスダンパー等のOPの差は埋めるのが可能として。)
個人的な空想なNXFやRXFを頭の中で造っていると実際の生産だと受注生産になってしまうかな?等と楽しんでいます。
全般的にはF(純粋なF及びFスポ)の括りというのも大排気量NAや過激なツインターボやツインチャージャーを採用したモデルが販売されない限り、疑問符が付いてしまうのも仕方ないんでしょうね。
ブログ、次回も楽しみにしています!
( -∀・)
鋼太郎
中身を見ても、ユーザーとの駆け引きのためだけとしか思えないしょうもない差別化です。(片側に意味を持たせるためにもう片方に制約を持たせる、みたいな。)
仰るように、F-SPORTSをベースモデルにするか、輸入車のようにパッケージオプションにして欲しいです。
すぽってぃ
この先EV化がかなり進んだとしてほとんどの高級車メーカーが乗り心地や静粛性、ラグジュアリーさを前面に出してくると思います
同じような方向性の車が多くなる中で、すべての車が完全自動運転でなく自分で運転するという余地がある限り、次に求めるものはスポーツさなどの感応性の部分
その時に一度廃止したFやFスポーツをまた復活させるとなると、一貫性がないとか流行りに乗っかるだけと言われ、いつまでたってもブランド力が上がらないと思うんです
欧州では伝統を重視する気質が結構強く、信念が見えずコロコロ変わる企業は信用度が低いです
差別化を図るならばレクサスらしさをもっと明確にしながら、F系と標準モデルの差をもっと分かりやすくした方がいいんじゃないかなあって思ってます
なまっくす
コメントありがとうございます。
「F」の新たな動きが見えなくなってしばらく経ちますが、小型ボディに大排気量の自然吸気エンジンと専用の走行パーツを組み合わせるというコンセプト自体が現代にはマッチしなくなってきているので、F SPORT搭載モデルを開発するにしても、その方向性や理念をしっかりしておかないとユーザーが根付かないように感じます。NXやRXのモアパワー版が発売されれば良いのですが・・・
なまっくす
コメントありがとうございます。
最近は確かにversion.L系とF SPORT系で悩みに悩まれる方が多いですよね。
外観はF SPORTが好みでもシートはセミアニリン本革を選択したい・・・もしくは後席の機能充実など。
日本市場に投入されるのは、完全受注生産ですから、もう少し個別オプションがあっても良さそうですよね。
なまっくす
コメントありがとうございます。
「F SPORT」、当方もここまで根付いたネーミングは大事にすべきと思うのですが、ここ最近の根本となる「Fモデル」の展開がみえないまま、F SPORTを続けることには疑問を感じる次第です。
ISF廃止、GSF廃止と「F」系は1代限りで廃止ということが続いているのは気になるところです。
おっしゃるとおり、F SPORTを継続するのであれば、通常版と異なり、エンジンやブレーキなどの走行性能に関わる部分のチューニングを変更するなど特別感を出すなどの差別化が欲しいところです。
Terry
あまり車に詳しくない顧客に対し、取り敢えずリセールが高いから、と購入させるディーラーもあるかと聞きます。。
私はNX後期バージョンLに乗っておりますが、理由はFスポのシートがタイト過ぎて合わない、、これに尽きます。 リッチクリームの本革シートも外せなかったので、白いルーフヘッドライニングのバージョンLに落ち着いた、、、となります。
オプションでの選択肢が増えると、購入の楽しみが更に増えるのですが。