今回は、個人的にも非常に気になる、レクサスの「F」モデルについての個人的な観測です。
2020年12月に「DIRECT4」など、今度の電動化の道筋が示されたことや、2021年の前半にはまったくの新型車(RZ450e?)が発表される見込みであるなど、今後のレクサスは既存モデルのマイナーチェンジに加え、インホイールモーターを用いた「DIRECT4」の採用など電動化技術を積極的に取り入れた、新たなステップに進んでいくものと考えられます。
また、トヨタ・新型MIRAIで採用された燃料電池車(FCV)のレクサス版への展開も期待したいところです。

その反面、さっぱり話題が聞こえてこなくなったのがレクサスのハイパフォーマンスモデル「F」。
希少となった自然吸気のV8エンジンと、トルコン式ATトランスミッション、専用の足回りやホイール、カーボンなど軽量素材など数々の専用装備をまとったスポーティ車ですが、2020年夏に「GSF」がモデル廃止となってからは、「RCF」が唯一の「F」モデルとなっています。

フラッグシップクーペ「LC500」がエンジンペック的にはある意味「F」モデルとも言えますが、重量の問題とラグジュアリーな作り、ブレンボやBBSといった「F」ブランドのアイテムや専用の足回りを投入していないことから「F」モデルとはいえないでしょう。

さて、一部カー雑誌には2021年秋には「IS F」(LCF・LSFとともに)が登場との記事もあります。確かに、4ドアの「F」モデルがなくなったことは残念ですが、現時点では、以下の理由から当面発売されることはないと考えられます。
①残されたモデルライフが「4年程度」であること
②投入するエンジンがない
③大排気量車の需要がない
④スーパースポーツ投入
⑤ハイパフォーマンスモデルの人気凋落
①に関しては、新型ISのモデルライフはおおよそ「4年程度」と考えられます。仮に2021年秋に「ISF」が発売するとなると、更にモデルライフは短くなり、「3年程度」が生産可能期間でしょうか?現実的にはさらに1年程度は延命措置される可能性もありますが、電動化時代が本格化する2025年までのわずかな期間のためにISFを新規開発するとは思えず、まさに「希望的観測」にしか過ぎません。
②に関しては、開発中と言われていた「新型V8・4Lツインターボエンジン」の開発がコロナ禍で、中断状態にあるとの情報が漏れ伝わってきています。数が出ないニューエンジンよりも、電動化技術へ開発リソースを割り当てることは明白です。レクサスが「DIRECT4」で道筋を示したのは、欧州車の後追いとなるハイパフォーマンスエンジンに頼らない「新たな方向性」を示したものと解釈しています。
また、新型ISの開発主査が何度も「重量増」を嫌う発言をされていることから、フロントベビーとなる既存のV8エンジンを搭載することはないでしょう。新型ISの開発コストは相当に厳しかったようですから、将来的にV8エンジンを搭載することを前提とした構造とはしていないことも想像に難くありません。
③に関しては、仮に発売されたとしても、過去の「F」モデルの販売動向を鑑みると平均月販台数が「月/50台」を超えることはないでしょう。販売期間を多めに見ても4年間、48ヶ月としても、合計の販売台数は日本国内では「約2400台」程度に過ぎません。
単なるエンジン載せ替えだけでは「F」は名乗れませんから、数々の専用アイテムの開発やボディ強化、チューニングコストを考慮すると到底開発費は賄えないのは明らかです。

④に関しては、トヨタブランドとして、2億円を超えると言われる、「GRスーパースポーツ」(仮称)の投入があります。
LCF/LSF/ISF用の「V8ツインターボエンジン」はもちろん待望ですが、反面、トヨタブランドのスーパースポーツの注目を削ぐことにつながりかねません。ジャンルは当然違いますが、発売時期が近いとスペックが比べられるのは必死ですし、約650馬力前後と推定される「V8ツインターボエンジン」はそれほど魅力的に映らない可能性があります。

⑤に関しては、ソースもなく、個人的な印象に過ぎませんが、「F」がライバルとしていたメルセデス・ベンツ「AMG」、BMW「M」、アウディ「S/RS」などですが、セダン離れということもあり、近年、街なかで「AMG Cクラス」、「BMW M3・M4」、「アウディ RS4/RS5」などの姿を見る機会が大きく減少しています。(反面、同価格帯の高額なSUVモデルやさらなる高価格帯のクルマへの移行が明らかに増えている)
もともと嗜好性の強いモデルではありますが、このクラスのハイパフォーマンスモデルが今の「旬」の形態ではないことは明らかでしょう。

僅かな希望としてあり得るのはレクサス「LS500」に搭載済の「V6ツインターボ」を搭載した「IS500」でしょうか?つまり、「F」を名乗らず、エンジンを換装して、それに見合ったボディ剛性強化を行う程度のモデルとなりますが、新型ISの販売状況を見ても、「IS350」など大排気量車の需要増は引き続き見込めないことこと、そもそも日本では「IS500」は未だに商標出願されていないことから、2021年に発表される可能性はないと考えられます。
また、スペック的には、既にEV車が既存のガソリン車を大きく超える数値を叩き出しているため、V6ツインターボエンジンを搭載した「IS500」を投入してもスペック的な優位性(対外的なPR効果)はほとんどないものと考えられます。
このように考えると、コロナ禍以前はかすかに「F」の展望が見えたものの、ウィズコロナ・ポストコロナの環境を考えると、電動化到来までの時間が一気に短縮され、既存のレガシーなエンジンを主体とした「F」ブランドの存続は極めて厳しいものになっていると強く感じます。

当方は過去に「ISF」、「RCF」を所有していた経験がありますので、セダン・クーペをベースにした「F」モデルの登場はもちろん待ち遠しいですが、現環境において、純粋な「F」モデルの登場を期待するのは極めて厳しいと感じています。

今後は「セダン・クーペモデル」でサーキット走行をそのままこなせるハイスペックを楽しむコンセプトの「F」モデルではなく、「SUVモデル」に電動化技術を搭載して、さまざまなシチュエーションで思いのままにクルマを操る楽しさを追求する、新たな「F」モデルへの転換が行われるのかもしれませんね。

この記事へのコメント
BEZLH
残念な結論にはなってしまいますが、非常に納得感の高い分析だと思います。正直なところ、RCFだけでも残してくれれば万々歳という感じがしています。
レクサスが「F」にこだわるのなら、今後は、電動プラットフォームという手段でその世界を構築することができるかどうかが問われるのでしょうね。
そもそも、Fは矢口氏の開発した車両だけです。
もちろん、矢口氏が託したスタッフがいますが、既に解散させられていますよね。
なので、Fはもう出ません。
すでに豊田社長はFに興味はありません。
GRですから。
確かに①〜⑤納得です
コロナ以前だと、欧州規制でHV車稼げるで有利なトヨタに無駄にデカいエンジン搭載の車をラインナップに入れてほしい願望がありましたが、今の流れでは資本投入はそちらに回したら負けなのは理解できます
でも。。。残念
BMWが最後の4リットル超えのエンジンになりそうですよね
なまっくす
肝心のRCFですが、電動パーキングブレーキも不採用でしたし、この先本当に改良されるかどうかも不透明な感じですね・・・
最後の「F」となる可能性もありますし、2021年の改良ではなんとかISのアップデート分を反映してほしいところですが・・・特に、ホイールのボルト締結は確実に効果がありそうですよね。
なまっくす
コメントありがとうございます。
やはり矢口氏が退任されたあとは開発が停止している状況ですよね。佐藤プレジデントが以前「F」開発について言及されていたのでかすかな希望があるとは思うのですが、以前のような環境ではないのでしょうね。章男社長は・・・やっぱりそうですよねぇ・・・
>Fは出ませんよ。
>
>そもそも、Fは矢口氏の開発した車両だけです。
>もちろん、矢口氏が託したスタッフがいますが、既に解散させられていますよね。
>
>なので、Fはもう出ません。
>
>すでに豊田社長はFに興味はありません。
>GRですから。
なまっくす
コメントありがとうございます。
ハイパフォーマンスエンジンの開発はたしかにプレミアムブランドとして必要と思いますし、私も好みですが、優先度合いを考えるといったん凍結せざるを得ないのは理解できるところです。なんとか、環境性能にも配慮した、4LV8ツインターボ・・・欧州市車勢を凌駕するスペックで世の中に出してほしいです!
>さん
>
>大排気量が大好きなんですが
>確かに①〜⑤納得です
>コロナ以前だと、欧州規制でHV車稼げるで有利なトヨタに無駄にデカいエンジン搭載の車をラインナップに入れてほしい願望がありましたが、今の流れでは資本投入はそちらに回したら負けなのは理解できます
>でも。。。残念
>BMWが最後の4リットル超えのエンジンになりそうですよね